ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』
4/14大千穐楽
長い長い冒険が、幕を閉じました。そして配信のアーカイブ期間も終了してしまいましたね。
色々な想いがあって、ありすぎて、なかなか言葉が見つかりませんが、少しずつ、ゆっくり、語ってみたいと思います。
思い返せば、決して楽しい思い出だけではありませんでした。本当に本当に苦しかった。そこに向ける強い気持ちがあるからこそ、耐え難い苦しみがありました。その時のことは以前たくさん語ったので、ここではこれ以上の言及はしません。
それでも、このミュージカルが本当に素晴らしかったと感じられたこと。純粋に楽しむことができたこと。そのことがとにかく幸せでした。
日々の変化にドキドキしたり、Wキャストの違いにわくわくしたり。そこに全力で生きる皆さんに会いに行くことが、楽しくて仕方ありませんでした。3公演のチケットが無駄になり、じゃあ3枚追加したってプラマイゼロでしょ!と言いながら5枚追加したことも後悔してません。
脚本、歌、演出、お芝居……その全てがジョジョ愛に溢れていました。こだわりと深堀りと遊び心。細かいところまで見逃せない、聴き逃がせない。場面転換や曲の繋ぎにもすごく工夫があり、特に1幕の完成度がとにかく異常なレベルで高い。
脚本は5年の間に17回もの書き直しが行われたそうですが、この完成度のものを見せられてしまえばその話にも納得しかありませんでした。並々ならぬ情熱と覚悟が、この現場の隅々まで染み渡っていたのをひしひしと感じていました。
ジョジョという作品の派手な部分をただ華やかに魅せるという方向には行かず、時代背景やそこに生きる人々をしっかり描く誠実さがこのミュージカルにはありました。それは2人の少年の人生を描くうえで重要なことでもあり、物語世界に深みと厚みをもたらしてくれたようにも思います。
カンパニーの皆さんとともに東京・北海道・兵庫と各地を回れたことも幸せでした。地方のグルメなど、しっかり旅を楽しんでいるキャストの皆さんの様子をSNSで見守るのも日々の楽しみになっていました。時には同じ店に行ってみたりね。
とにかく仲が良いカンパニーの皆さん。もう今後、愉快なオフショットが見られなくなるのかと思うと寂しくて仕方ない。
ジョジョミュカンパニーは、普段はあまりミュージカルに出演しない方たちも含めて本当に色々な方たちが集結していて。だからこそ尊重し合っていて支え合っていて、それぞれがそれぞれにできることで光り輝いていて、仲が良くて家族みたいでバランスが良くて雰囲気が良くて、本当に本当に大好きだなあ。ひとりひとりが輝く星でした。
ジョナサン/松下優也さん
可愛くて無邪気な少年らしさ、太陽のようなピカピカな笑顔、真っ直ぐ突き抜けるような歌声、成長してからの影、ディオを見つめる哀しい瞳、最期の美しさ……原作そのままのジョナサンで大好きでした。
まさに愛すべき甘ちゃん。戦い倒すことへの躊躇いが、その繊細な表現から痛いほどに感じられました。ちょっとした声や表情、その細やかな表現全てが、ジョナサン・ジョースターという人物を解像度高く我々に見せてくれたように思います。
本人はサバサバしていておもろい兄ちゃんなところも良い。個人的にはサービス精神の種類が宮野さんと近いものがあるなあと思ってました。いつもジョジョ立ちで締めてくださってありがとうございました!
ジョナサン/有澤樟太郎さん
THE・少年漫画の主人公。熱くてガムシャラで声がデカくて常に全力で、勢い余って甘噛みしたり全力すぎてたまに鬼のような形相になってるところも愛おしかったです。そして頭がちっちゃすぎて意味がわからない。シルエットがあまりにもジョナサン。
少年時代から松下ジョナサンよりもしっかりしているというか、しっかりしようという意志が感じられるんだけど、それが余計に不器用さを際立てていてかわいかったな。もう有澤ジョナサンのクソデカ「ま゛た゛あ゛し゛た゛ね゛! ! ! !」を聞かずに明日を迎えたくない。
松下ジョナサンがピカピカの太陽なら、有澤ジョナサンはギラギラの太陽。でも、ふとした瞬間に日だまりのように穏やかに笑う時があって、私の情緒はおしまいになりました。
頼れるジョナサンなのに、カーテンコールの挨拶になると急にヘニャヘニャになって何言ってるのかわからなくなるところも楽しませてもらってました。(本人は至って大真面目なのに面白がってしまい大変申し訳ない)
カーテンコールの挨拶聞いていても、ジョジョがこの2人で本当によかった…と思ったんですよね。松下くんは話が上手で盛り上げ上手。サービス精神も旺盛で常に堂々としていて見ていて安心感がある、おもろくて頼れる兄ちゃん。有澤くんは決して話が上手なわけじゃないけど、言葉選びが正直で真っ直ぐで、そして最終的には力技で何とかしてしまえるところね(笑) 対照的で、でも2人とも心が強くてドンと構えてくれてて。そんな2人がジョジョでよかった。隣りにいるのが繊細な宮野さんだから、余計にそう思ったなあ。
ジョースター卿/別所哲也さん
まず第一に、誰よりもデカくて最高。完璧なキャスティングと言わざるを得ない。ジョースター卿の歌声が響き渡ると、一気に荘厳な雰囲気になりましたね。父としての温かさ、威厳、貴族らしい品格、そして人間を信じる覚悟。原作ではジョースター卿の心情はほとんど描かれていませんでしたが、別所さんのお芝居と存在感が全てに説得力をもたらしてくれたように思います。「全て繋がっている」「全てに意味がある」カーテンコールでの胸に染み渡ってくるようなお話も忘れられません。
エリナ/清水美依紗さん
とにかく歌がうますぎる。ステージ上にたった1人、派手な演出もない中で、しっかり歌だけで観客を引き込む力。圧巻でした。可愛らしい少女から、気高く強い女性へ。原作では描かれることのなかった、待つ者としての孤独や覚悟、強さ……美依紗ちゃんはその全てを完璧に表現してくれました。
そして個人的には誰よりも“ジョジョ顔”だなと思っています(笑)
スピードワゴン/YOUNG DAISさん
ストーリーテラーとして一番最初に登場し、一番最後に物語を締め、休憩後のアドリブコーナーでは客席を盛り上げ、語り継ぐ者として本来の出番ではないところでも度々登場する……本当に大活躍で大変な役回りだったと思います。それもミュージカル初出演だったと言うから驚きです。
スピードワゴンのラップが始まった瞬間に、これはものすごいものが始まったぞ…!と鳥肌が立ったのを今でも鮮明に思い出せます。
ツェペリ/東山義久さん
実は今回ジョジョミュキャストの中で、他作品でも見てみたいと一番思ったのが東山さんだったんですよね。体は小さめ(たぶん周りの人たちがデカいだけ)だけど、その分身軽で動きがキレッキレでシブくて色気があって全ての所作が美しい……まさに理想のイケオジ。波紋攻撃に入る時に、波紋隊の動きに合わせて胸をパカっと開く動き(説明が難しい)するのがめちゃくちゃかっこよくて惚れました。ジョナサンにとって父のように温かく寄り添う姿が印象的です。
ツェペリ/廣瀬友祐さん
スラッとしていて手足が長い。帽子がある分さらにデカい。実は廣瀬ツェペリさんを生で見られたのが2回だけで(しかもそのうち1回は完全初見で記憶がない)、あとは全て東山ツェペリさんだったというバランスの悪さだったため、他の皆さんよりも廣瀬ツェペリさんへの解像度が低くて申し訳ない……もっと見たかったな!そんな感じでシブいイケオジ東山ツェペリさんをずっと浴びていたので、そういえばツェペリさんって変なおじ…お兄…おじさん…だったなということを廣瀬ツェペリさんが思い出させてくれました(笑) それなのにかっこいいからズルい。ユーモア溢れるお茶目さでいつも楽しませてくださってありがとうございました。
切り裂きジャック/河内大和さん
アーチャー警部とのギャップがすごすぎて、3回目くらいまで…というかそういう話を聞くまでは同じ人が演じているなんて全くもって気づいていませんでした。
ジャックがあんなにセクシーだなんて聞いてない。登場人物の中ではダントツで狂気的でヤバいヤツだと思うのですが、その色気とちょいちょい出してくるお茶目さで絶妙な具合に憎めない愛されキャラになっていたように思います。ディオに唯一のコミカルシーンのきっかけをくれてありがとうございました(笑)
ワンチェン/島田惇平さん
ワンチェンの脅威の身体能力は、間違いなく見どころの一つ。このミュージカルの魅力の幅をさらに広げてくれました。
個人的には、ディオを、宮野さんを、慕ってくださってありがとうございますと全力で伝えたいです。感謝が止まらない。SNSでもいつも楽しませてくださってありがとうございました。ワンチェンに対してこんなにも愛おしさを感じてしまうようになったのは、間違いなく島田さんの功績です。きっと多くの人がそう思っていると思います。
ダリオ/コング桑田さん
これは褒め言葉なのですが、あまりにもハマり役すぎる。ディオへの呪いのように何度も登場するダリオ。悪夢のような歌声に、ものすごい悪人面。だからコングさんがあんなにも愉快でかわいいおじちゃんだったとは(笑)たまにぶっこんでくるアドリブでも笑わせてもらってました。 あと関係ないけど、絶対に教育番組で見せてはいけないダリオを演じていながらブンバ・ボーンの歌担当だったと知ってガチで驚きました。
忘れてはならないのはアンサンブルという存在。先ほど、時代背景やそこに生きる人々まで描く誠実さの話をしましたが、そのためには層の厚いアンサンブルの存在が必須でした。熱狂に包まれた時代、うごめくパワー、苦しみと希望。溢れんばかりのエネルギーに満ちたたくさんのアンサンブルの皆さんがいなければ、今回のミュージカルは成り立たなかったと思います。工藤広夢くんのダニーもどんどんリアリティを増してて本当にすごかったですね。
そしてもう一つ、忘れてはならないのが、演奏を担当したバンドの皆さん。日によって、Wキャストによってもセリフの間は違っていたと思いますが、その全てに合わせて演奏するのは決して容易ではないと思います。素晴らしかった。お疲れ様でした。
他にも衣装デザイン、作曲、舞台機構を操っていた方や製作に携わった方、挙げ出すとキリがありませんが、関わった全てのスタッフ・キャストの皆さんに全力で敬意と感謝を伝えたいです。あんなに複雑な舞台機構見たことないよ……本当に本当にすごい。
最後に、
ディオ/宮野真守さん
ジョジョミュに、ミュージカルのディオに、出会わせてくれて本当に本当にありがとう。
毎回の「人間のやめ方」がある種の一大エンタメになっていましたね。日々その時の感情を大切に舞台に生きる宮野さんだからこそ、その変化がグラデーションのようにディオの存在を彩り、こちらにも色んな感情をくれました。そう、“グラデーション”でした。日々変わるお芝居の中でもディオとしての芯はずっとブレずに真ん中にあった。
ジョジョという作品、ディオという役……熱狂的なファンも多く、更にはどの側面にフォーカスするかで何百通りもの捉え方ができるような難しいキャラクターと向き合い続け、ブレずに演じきったこと。稽古からずっと1人で2人分のジョジョと生きてその感情を受け止めた体力と精神力。改めてすごいことですよ。
あんなに怒り憎しみを抱える人物の人生を毎日、日によっては1日2回も生き続けるのにはどれだけの精神力が必要なのだろう。原作を知っている人も知らない人も、きっとディオのことを改めて深く深く考えたくなったのではないでしょうか。宮野さんのお芝居の魅力はそういう深みにあると思っています。
思えばウエストサイドストーリーの時、もう30代後半になったしさすがに生身で10代の役をやるのはこれで最後だろうな~と思ってたんですよね。それから4年、40代でも何の違和感もなく10代の役をやっているしなんならあの時よりも若い少年役という……可能性が無限大すぎるでしょうよ。つまりはね、ジョジョミュ再演(あると思っている)の時もきっとディオでいてくれますよね??って話で。
宮野さんに出会えて、たくさんの素晴らしい作品に宮野さんが出会わせてくれた。すべてが繋がって、このジョジョミュに、ディオに出会えた今が本当に幸せです。出会ってくれて、出会わせてくれてありがとう。大好きです。
私はこのジョジョミュを語り継ぐ者として、観劇した各回の感想を書き残してきました(まだ全ては書き終わってませんが)。その時々の思いを書き残しておくことは、ジョジョミュが存在したという事実を、ジョジョミュと共にあった日々を、かけがえのない思い出を、永遠にするということではないでしょうか。
永遠の今日に祈りを捧ぐ
私が死んだ後にも、この文章がネットの海に残り続ける……世界が一巡するまで語り継ぐことは、ジョジョミュを観測した私の使命…なのかもしれないですね。
まだまだ語り足りませんが、オタクもクールに去るぜ!
ありがとうございました!
(クールに去りたくてつい買ってしまったよね)